1921(大正10)年、芥川龍之介(当時29歳)は新聞の特派員として上海に渡る子どものころから「西遊記」などの古典に親しんだ芥川にとって、そこは憧れの理想郷のはずだっただが、当時の中国は動乱のさなか。清朝を倒した革命は、やがて軍閥の割拠という混乱に至り、西欧諸国や日本が上海の租界をわがもの顔で支配し、民衆は壮絶な貧困にあえいでいた。 理想と現実のギャップに絶望すら覚えながらも、芥川の知性は巨龍・中国の肉体世界へと分け入っていく。そこで出会うのは、革命に生きる男たちと、時代をしたたかに生き抜く妓楼の女たちだった…。